ぼくの昴さん






「だいたい昴さん、ぼくのこと甘く見過ぎてますよね。男の部屋に一人で来て、何も起きないと思ってるんですか?」
 低い声で囁きながら、ずいと足を踏み出す。壁際に追いつめた昴さんは、すごく怖い顔で睨んでるけど、少しだけ怯えの色がのぞいている。ぼくの影が昴さんの白い顔に落ちて、月が陰るみたいだった。
 悪いのは昴さんの方だ。いつも艶めかしい脚を晒して、からかうような微笑を投げかけて、男のぼくがいつまでも何もできないと思う方が間違ってる。そろそろ身をもって知ってもらってもいいと思った。
「図に乗るな…!」
 おもむろに繰り出された鉄扇を、ぼくはひょいと避けて、素早く手首をつかんだ。
「く…っ」
 軽く捻ると、いとも簡単に鉄扇はぽろっと落ちた。もう邪魔するものはない。ぎゅっと強く抱きしめると、昴さんはじたばたもがいた。
「は、はなせっ…新次郎…!こんなことをして、ただで済むと…」
 必死にわめく昴さんの、うるさい口を唇で塞いだ。びくんと身をすくませた昴さんの唇は、ふわふわして、やわらかくて、ぼくは唇で挟むようにして味わった。噛みつかれる寸前に唇を離して、悔しそうな昴さんににやにや笑ってみせた。
「えへへ…昴さんたら、どこまでも強気なんですね。やっぱり昴さんはこうでなきゃ」
 ひょいと持ち上げると、昴さんの小さな体は軽々と宙に浮いた。ぽかぽか蹴ってくるのを耐えて、ベッドにそのままもつれ込む。
「やめろ!馬鹿!昴をはなせ…!」
 昴さんは死にものぐるいで暴れている。でも、その力は細い腕や腰のままにか弱いものだった。とはいえ、いきなり二の腕に噛みついてきたのには参った。
「あいたた…!もう、昴さんったら、いい子にしてたらやさしくしてあげるのに…。ちょっと乱暴にしますよ」
 ぼくは、ズボンの裾に手を入れて、下着の脇からいきなり指を突き入れた。
「ぐ…あっ!!」
 昴さんは重く呻いて、ぴんと硬直した。目を見開いたまま息もできないようで、ひくひくと細かくふるえてる。
「いきなりだから、苦しいですよね…おとなしくするって約束するなら、抜いてあげますよ…」
 この隙にと片手で手早く昴さんの服をはだけながら、なだめるように声をかける。でも強情な昴さんはなかなか折れない。仕方ないので、ぐりぐりと中で指を動かしてみる。
「く…う…っ…ひあっ…」
 目尻に涙が浮かんだ。細い声は本当に苦しそうで、ちょっと可哀想になった。
「ほら、もう観念してくださいよ。服だってこんなに脱がしちゃったし。大人しくしましょうよ、ね?」
 やさしくキスして髪を撫でると、昴さんはぎゅっと目を瞑った。ふるふると顎をふるわせて、もうどうしようもないみたいに、ほんのわずかにうなずいた。えへへ。ぼくの勝ちだ!
 ぬるぬると指を抜くと、昴さんは大きく呼吸した。やっと息ができるようになったみたいだ。もっとも、後でもっと太いものを突っ込んじゃうけどね。
 昴さんの腰に馬乗りになったまま、ぼくはわざとゆっくり服を脱いだ。昴さんの服はもう全部脱がせてあって、靴下だけにしてある。ズボンの中から、ぼくの猛ったものがぶるんと奮い立つのを、昴さんは不安そうに見ていた。昴さんにこんな顔させてるなんて、ちょっとわくわくする。
「大丈夫ですよ…やさしく可愛がってあげますから…」
 昴さんの顔を抱いて、ぼくは深いキスをした。
 念のため、噛みつかれないようにしっかり顎を押さえて舌を入れると、昴さんは息苦しそうに鼻を鳴らした。戸惑ったように逃げる可愛い舌を、楽しくてさんざん追い回した。それから、羽二重みたいな耳たぶをたっぷり舐めて、うなじ、鎖骨と降りていく。
「あんっ…!」
 サクランボみたいな胸の先を口に含むと、昴さんが悩ましげな声をあげた。喉元で奏でられるくぐもった声が、耳の中でころころして気持ちいい。舌先で潰される乳首は、ぷりっと固くて、なんだか甘いような味がした。
 薄い胸の肉を寄せ集めるようにして揉みながら、ふと顔が見たくなって、頬を寄せて昴さんの表情をのぞき込んだ。昴さんはぼくの手首をつかんだまま、顔を背けて逃れようとしてる。顔が向く方へしつこく追いかけると、昴さんは恨めしそうにぼくを見上げて、諦めたように眼を伏せた。ああ、昴さんてば、可愛いんだから。そう思う心のままに、
「昴さん…可愛いですよ…」
 と耳元に息を吹きかけながら囁くと、
「言うなっ…馬鹿…!」
 と小さく昴さんが呟いた。その顔はまっ赤になってて、本当に食べちゃいたいくらい可愛かった。

 飽きることなく、たっぷり昴さんの胸で遊んでから、ぼくは体を起こし、膝を開いて持ち上げた。 
 ぼくの大好きな昴さんの太腿をさらさら撫でながら、内側のしっとりした肌に口づける。付け根の方に少しずつ移動しながら、次第に強く吸っていくと、昴さんの呼吸が、だんだん緊張に乱れていくのがわかった。肌の色が変わる、ぎりぎりの所まで吸い付いて、ひょいと反対側の足に唇を移すと、昴さんの口から、安堵のような不満のような微妙な吐息が漏れた。
 ぼくはくすくす笑いながら、開いた脚の間に顔を寄せた。子供みたいなつるつるの縦すじの隙間から、かわいい肉芽がちょっぴり起きあがって顔をのぞかせているのが見えた。親指で押すようにして左右に開き、濡れた部分にふうっと息を吹きかける。昴さんの綺麗な花びらがひくひくして、中からじわりと蜜が湧いた。面白くて、何度も息を吹きかけると、その度に昴さんはびくんとふるえて蜜を零した。
「しん、じろ…う」
「なんですか?」
「……」
「ちゃんとゆってくれないと、わかりませんよ」
「…く…っ…」
「どこを舐めて欲しいんですか?」
「…昴、の…」
「昴さんの?」
「…………馬鹿…!恥ずかしくて、そんなこと言えない…!」
  昴さんは顔を覆って泣きべそをかいちゃった。わひゃあ。しょうがない。今日の所は許してあげよう。
「わかりました。昴さんの、恥ずかしくて言えないとこですね」
 そう言って、ぼくは尖らせた舌を入れて掻き回すように動かしながら、小さなピンクの粒を指先できゅっと摘んだ。
「や…ああっ…!」
 昴さんは普段聞いたこともないような甲高い悲鳴をあげた。虹のアーチみたいに背中を反らせて、びりびりと体を痙攣させている。イっちゃったんだ。
 昴さんは頬を朱色に染めて、小さな胸を激しく上下させていた。次はぼくの番だ。レディーファーストを守ったので、心おきなく昴さんの中を目指して突き進んだ。
「く…あ…っ」
 二人で同時に呻いた。すごく狭くて、一生懸命ゆっくりと押し込んだ。ぎちぎちに締めつけられて、痛いくらいだった。
「昴さん、力を、抜いて…」
 歯を食いしばってる昴さんは、いくら声をかけても強張ったままだった。ようやく全部入った時はぼくも汗だくだった。
 かちんかちんに固くなった昴さんのおなかのあたりを、何度もさすったり揉んだりした。胸の先もいっぱい舐めた。ようやく少し力が抜けてきて、ぼくはよいしょと突き上げた。
「うあっ…!ああ…」
 ゆっくりと揺さぶると、昴さんは首を左右に振った。その度に黒髪が枕に広がって、水にそよいでいるみたいで綺麗だった。昴さんの小さな手が、シーツをつかんだり枕を握ったりしてるので、ぼくの肩へ運んでつかまらせてあげた。汗で滑って落ちるのを何度もつかまり直す様子は、しがみついてるみたいでとっても可愛い。
 中は溶けるように熱くて、ぬるぬると擦れて、すごく気持ちよかった。ぐちゃぐちゃ掻き回したり、一番奥をぐりぐりしたりして、いっぱい突いた。その度に昴さんは悩ましい声で喘いだ。もっともっと頑張って昴さんの鳴き声をいっぱい聞きたかったけど、ああ、もう気持ちよすぎて、限界だ。
「んっ…あ…あんっ…あっ…昴、はもう……ああ…っっ!」
 その瞬間、肩に小さな爪が食い込んだ。ささやかな痛みは、大きな快感の、絶妙なエッセンスだった。
 きゅうきゅう締めつけてくる昴さんの中に、ぼくは、いっぱい、いっぱい、注いであげた……






「……大河…新次郎……貴様の独り言は、すべて聞かせてもらったぞ…」
 ティッシュで拭いて大きく息をついた時、背中で地獄の底から響くような声がした。
 振り向くと、いつのまにか昴さんがドアのところに立っていた。ああ、今ぼくが脳内で堪能したまんまの、綺麗な脚、かわいい唇、細くて、小さな体…。
「あっ昴さん、えへへ、聞かれちゃいましたか。他にも、セントラルパークでアオカンとか、シアターの道具部屋でどっきりとか、露天風呂でしっぽりとかあるんですけど、何かいい新ネタありませんかね?」

 狂い咲きが吹き荒れて、ぼくの意識はそこで途切れた。昴さんは怒るととってもおっかないけど、そんな昴さんがやっぱり大好きだ!






《ちゃんちゃん。》












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