「あ、あなたはおばあちゃんじゃないわね!いったい誰!?」
マリアの緊張した声に、レニは毛布をはね除けて銀色の頭をあらわにした。
「フフ…おまえのおばあちゃんは、ボクがいただいたよ…」
むっくりと起きあがりながら、薄い笑みを浮かべる。
はっとしてマリアが寝台の奥をのぞき込むと、そこには衣服をはぎ取られたカンナがぐったりと倒れていた。その肌に散らばる、花のような噛み痕に、マリアの顔が蒼白になる。
「お、おばあちゃん…!」
こわばった手から、どさりと籠が落ち、ワインや果物などの見舞いの品々が床を転がっていった。
「次は、おまえをいただくとしようか…」
レニの妖しく輝く深い瞳に見据えられると、体の力が揮発するように抜けてゆき、マリアはくたりと膝を折った。
小刻みにふるえる細い顎に、レニがすっと手をかける。
「おまえのほうが、やわらかくておいしそうだ…」
胸元のリボンを弄ぶようにほどきながら、レニの唇からピンク色の舌先が除くのを見て、マリアの体中の血がざわめきながら引いていった。

「おねがい、狼さん…どうか私を食べないで…」
涙を浮かべるマリアの顔を、満足げに見下ろしながら、レニの頬がふっとゆるむ。
「こわいのかい?かわいそうに…」
憐れむように笑いかけながらも、その瞳は、手の中の獲物をなぶるけもののそれだった。
「どこから、食べようかな…」
レニの美しい声で囁かれると、その恐怖はどこか甘ずっぱく感じられ、胸の奥がきゅうっと締めつけられるようだった。

 ねらいを定めるように喉元を探られながら、マリアは奇妙な不安に酔っていた。
 何か、自分が違うものに変えられてしまう予感。掻き乱され、貪られ、身も心も喰らいつくされる。この薔薇のような唇は、触れたら冷たいだろうか、熱いのだろうか。白い牙がしなやかに肌に食い込むその瞬間は、どんなにか甘美だろう…。
 ぴりぴりと痺れるようなおののきが、身動きすら忘れたマリアの、体の表面を這い上がっていく。

「…助けて…」
ようやく絞り出した声は、うっとりと吐息の中でかすれ、レニの唇に塞がれて途絶えた。


 
 
 
 
 
 
 
このあと大神狩人が助けにくる予定だけど、やっぱど〜でもいいので以下略。
 
 
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おまけ。



カンナごめん^^。



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